09 にじのサンドイッチ

haco No.9

僕は、にじのサンドイッチ。
彼女の大好きなハンバーグと蜂蜜ドレッシングの人参サラダをたっぷりはさんで、テーブルの上に大きなにじをかけた。

けれども彼女は泣いていて、目の前の僕には気がつかない。頬をつたう涙の線は、僕にはかなしい雨に見えていた。

僕は彼女の心がかなしい雨に溶けてしまわないように、傘を広げた。
やまない雨はないからね。

雨上がりのテーブルに、彼女は僕を見つけてくれた。
にこりと微笑む彼女の笑顔は、雲の透き間からそっとのぞく太陽みたい。
彼女がサンドイッチを食べ終わるまで、僕は七色の光が消えないように、がんばった。
そして、さんさんと輝きはじめた太陽を見とどけながら、黄色い世界ににじんでいった。